小説「文豪短篇傑作選BUNGO」
日本には文豪と呼ばれる方々がたくさんいらっしゃいます。そんな文豪たちの短篇を集めた一冊がこちら。
~収録作品~
谷崎潤一郎:富美子の足
芥川龍之介:魔術
梶井基次郎:檸檬
岡本かの子:鮨
太宰治:黄金風景、グッド・バイ
林芙美子:幸福の彼方
永井荷風:人妻
坂口安吾:握った手
三浦哲郎:乳房
文学作品は読みにくかったり取っつきにくかったりするイメージがあるのかなと思いますが、この短篇集はどれも読みやすい作品ばかりでした。「普段文学作品は読まないわ」という方や「読んでみたいけど難しそうよね」という方の入門編には丁度良いと思います。
どの話も良かったですが、中でもとりわけ気に入った作品は「グッド・バイ」「握った手」「乳房」。どれも男性が右往左往しているのですが、その様が実に面白いです。未完となった「グッド・バイ」。太宰さんが今後どんな展開を用意していたのか、読めないことが残念で仕方ありません。
じんわりと心にしみたのは、「高瀬舟」「鮨」「幸福の彼方」。特に「高瀬舟」はやるせない気持ちになりました。描写がリアルすぎて恐ろしかったですが・・・。「幸福の彼方」はすごく温かい気持ちになりました。絹子さんは強い女性だと思います。憧れる。
何度読んでも苦手なのが谷崎潤一郎。谷崎さんの描くフェティシズムは凄いと思う一方、耽美主義は途中でついて行けなくなってやっぱり苦手だと感じてしまう・・・。学生時代に読んで以来トラウマな「春琴抄」のような恐ろしさはなかったので、その点は読みやすかったです。
現代の作家さんはもちろん面白いし素晴らしいですが、時々は文豪の作品を読んでみるのも、当時の時代背景や現在にも通じるものを読み取れて、楽しいと思いました。就職してから純文学はめっきり読まなくなったのですが、また読みたくなる一冊でした。